なぜワシントンはトランプが嫌いなのか? #33

及川幸久です。以前、このトランプチャンネルの第30回で、トランプ政権の福祉政策について採り上げました。トランプ大統領が大統領に就任してから、初めての政府予算案。その中で、福祉の改革として「低所得者向けの福祉サービス」をまったく新しい発想で、福祉なんですが、仕事をするほう、働くほうに導いていくという福祉政策をご紹介しました。

それを見ていただいた方から、納得できないと。結局、福祉サービスを受けられなくなる人が増えるだけじゃないか、というフィードバックをいただきました。こういうフィードバックはすごくありがたいです。

そこで、今日はもう一度、このトランプさんの福祉政策について、ちょっと別の角度から掘り下げてみようと思います。

今日のトランプさんのTwitterは、実はトランプさんが大統領になるはるか前、これは2012年ですから、大統領になる4年も前にこんなツイートをしています。

「オバマ大統領、我らが福祉とフードスタンプの大統領は、福祉の政策を拡大したことを誇りに思っている。そして彼は、働くことの意義をまったく信じていない」

福祉も大切だが、仕事の意味というのはもっと大事じゃないかというのを、ずっと強調しているんです。

この信念を、ついにそのあと、このツイートから4年後に大統領になって、国家予算として形にしました。それが今回の予算なのです。

そのトランプさんの予算案が発表されて以来、ワシントンの人々にものすごく嫌がられています。私が受けている感じとしては、「反対されている」というよりも、「トランプは嫌な政策を出してきたな」と、“嫌がられている”という感じです。

何が問題なのか。

トランプの予算の中心的な概念は、「向こう10年間で政府の負債をなくす」。これはバランシングと言いますけれども、政府が入ってくるお金と出ていくお金は、今は圧倒的に出ていくお金(使っているお金)のほうが多くて赤字です。この政府の赤字を、これから10年でなくしていくことが目的です。

特に問題なのは、8年前に大統領になったオバマ前大統領です。オバマさんが大統領になった8年前は、アメリカ政府の負債は約10兆ドル(約1000兆円)でした。

今の日本政府の負債とほぼ同じだったのです。

それが、オバマさんの2期8年の間に、なんと20兆ドルに倍増してしまったんですね。

そこでトランプ政権がまずやろうとしているのは、政府の予算の大幅な削減です。政府の各省庁の予算の割り振りを、3割とか2割とか、大幅にカットしています。

例えば、環境保全庁は3割カット。普通、環境保全庁の長官になる人というのは、環境保護を主張する人をトップにするものですが、トランプ政権では逆に、環境保全のための予算をカットする人をトップにしています。

それから国務省。日本でいう外務省ですね。国務省の予算も3割カットしました。

福祉はどうか。福祉は単なるカットではなく、内容を変革しました。例えば、アメリカの福祉として非常に有名なのが、「フードスタンプ」という制度です。フードスタンプというのは、年収が少なくて生活するのが苦しい人たちに、一定のクレジットカードのようなカードを与えて、そのカードで一定額、スーパーで食糧品を買ったりすることができるという食事の提供です。

しかしこのフードスタンプは、実は本当は仕事をしようと思えばできる人たちが、単に怠け者で仕事をせずに何もしていなければ、この制度を利用して自分の食事代がもらえる――そういう人たちが集まる制度になってしまっていたのです。

まじめに働いて、このフードスタンプの予算も含めて、政府に税金を払っている人たちからみれば、まことに不公平な状態になっています。

その結果、オバマ政権の8年間の間に、フードスタンプの受給者というのは32%も増えてしまいました。

トランプ政権の福祉改革

そこで、トランプ政権がやろうとしている改革は、大きく分けて2点です。

まず1つ目は、働ける体であれば働いてもらう。「働くこと」を、このフードスタンプの受給条件として入れました。

もう1つは、このフードスタンプの予算の負担を、連邦政府から、その一部を州政府に移す。現在の制度は、実際にこの制度を運用しているのは全米各地の州政府なのですが、予算はほぼすべて連邦政府、国から出ているわけです。ですから、使っている側からすれば、自分たちで運営しているがお金は全部国から出ているので、どうしてもやり方が適当になってしまう。

しかし、その一部でも自分たちが出すことになれば、州政府も本気になって丁寧にやるようになる。

この2つの改革を、ワシントンの政治家たちは嫌がっているわけです。議員たちは、このフードスタンプを受ける条件の中に「働くこと」というのが入ったり、そもそも連邦政府の予算が減らされることを嫌がっています。

なぜなら、日本もアメリカも一緒ですけど、政治家というのは自分たちが使える予算を減らされるのが、一番いやなんですね。これは民主党も共和党もまったく一緒です。

納税者の視点でみると・・・

トランプ政権がやろうとしていることは、議員の立場ではなく納税者の立場からみて、この予算をもっとも効率的で効果的なものにすることが目的なのです。

例えば実例として、アメリカの州の中にメイン州という州があります。ここではフードスタンプの運営方法を独自にすでに変革しています。働くことを条件に入れているのです。

その条件というのは、州政府が提供する職業訓練もしくは地域へのボランティア活動を、週にわずか6時間だけやりなさいと。これを条件にしたんですね。

そうしたら、どうなったか。

このフードスタンプに入っていた人の中で、「働こうと思ったら働ける人たち」のほぼすべての人たちが、フードスタンプをやめてしまったのです。

これは何を表しているかというと、結局、このフードスタンプを利用している人たちの大部分は、ただ働きたくないから働かなかっただけだったということ。もし収入があればこのサービスは受けられないが、働かないことによって収入がないので「このサービスをただで利用していただけ」の人たちが、たくさんいたということです。

同じようなことは、日本でもあるんじゃないでしょうか。

納税者の立場からみると、このメイン州のような改革を、これから全米でやることによって、ものすごい額の税金が無駄に使われずに済むようになります。

トランプ政権の試算では、むこう10年で800億ドルが、おそらく無駄にならずに済むだろうと言われています。

福祉に“自助努力”の精神を

結局、この政策というのは、福祉というものの中に“自助努力”の精神、“セルフ・ヘルプ”を入れ込んだものなのです。

実際の人生というのは、たしかに健康面では働ける体であったとしても、いろいろなことがあって心が折れて働けない時は、誰にでもあります。

でもそんな時に、こういう福祉が支えてくれる。

でも、ただ支えるだけではなく、折れてしまった心を励まして、もう一度立ちあがって仕事をしようという気にさせてくれるのも、福祉の役割です。

福祉の中に”セルフ・ヘルプ”の精神を入れること――これはまったく新しい福祉の発想です。

 

 

 

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